映画『英国王のスピーチ』
今回は映画『英国王のスピーチ』を紹介。
あらすじ、個人的な見どころ、評価をまとめました。
(核心部分を触らない程度のネタバレを含みます)
映画『英国王のスピーチ』の基本データ
タイトル:『英国王のスピーチ』
原題:『The King’s Speech』
監督:トム・フーパー
脚本:デヴィッド・サイドラー
製作総指揮:ジェフリー・ラッシュ
ティム・スミス
ポール・ブレット
マーク・フォリーニョ
ハーベイ・ワインスタイン
ボブ・ワインスタイン
出演:コリン・ファース
ジェフリー・ラッシュ
ヘレナ・ボナム・カーター
ガイ・ピアース
公開:2010年
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おすすめ視聴者・読者層キーワード
- イギリス
- 王家
- 苦悩
- 友情
- 史実を基にした作品
- 歴史
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あらすじ
吃音症を克服するためにさまざまな手を尽くしてきた「ヨーク公アルバート王子」だったが、父王の代わりに行った演説を成功させることができず、聴衆に落胆されてしまう。
「アルバート王子」は藁にも縋る想いでオーストラリア出身の言語聴覚士「ライオネル・ローグ」のもとを訪れ治療を試みる。
「ローグ」は治療のために患者との対等な関係を求めるのだが、「アルバート王子」はこれに反発し……。
ココが見どころ
苦悩と友情の果てに待つ大舞台
今もなお誤解の多い「吃音」に対するの苦悩。悩む「アルバート王子」と正面から向き合う「ローグ」との友情。そして終盤に待つ大舞台へ段々と歩みを進めていく姿。好きなシーンや心に残るシーンは多いですが、この三点が大きな見どころして挙げられます。
舞台は1925年のイギリス。
演説に失敗した「アルバート王子」の姿から、吃音に対する重い苦悩が窺える。そのような描写から幕が上がり、街の空気もどこか沈んでいる様子から、序盤はどうしても空気が重い。
吃音に対する認識も時代のせいか誤解が多く「煙草を吸うと良い」と医者からアドバイスされたり、中盤の演説練習シーンでは「リラックスしろ!」と怒鳴られたりします。とくに煙草については現代人からしてみると信じられませんね。
そのような閉塞感のまとわりついた空気漂う中、「アルバート王子」が「ローグ」の治療に希望を抱いた瞬間、解き放たれたようにテンポが良くなります。
最初は治療法に疑ってかかっていたのですが、段々と好転していく症状に少しずつ心を開いていく「アルバート王子」。妻の「エリザベス妃」も一緒に発声の練習に付添い、王子のお腹の上に乗りながら「なんだか楽しいわ」と声を弾ませる姿に視聴者も笑顔にさせられます。
「ローグ」も単純に有能なだけの人物ではありません。私生活の不安をのぞかせたり、診療の際には俗物的なトークをする、普通の一般市民としての印象が強いです。そんな「ローグ」と立場のある「アルバート王子」が段々と友情を確かなものにしていく姿は、ストーリーを語る上で欠かせない魅力となっています。
好転する吃音に対する気持ちとは対照的に、段々と深まっていく「王族」としての「アルバート王子」の悩み。重責を背負いながらも懸命に奔走し、随所で見られる喫煙シーンは王子の抱えている不安や焦燥を色濃く表現しています。
吃音に対して正面から向き合う「ローグ」もその心を正確に捉えることはかなわず、物理的に広がっていく二人の距離は序盤の不安を思い起こさせます。
このように王子のメンタルと「ローグ」との距離感を巧みに表現した描写が詰め込まれており、後半に差し掛かる頃にはドップリと世界観にはまっていることでしょう。
総評★★★★「静かに余韻を残す、史実を基にした優秀作品」
身分を越えた友情により感動と、静かに勇気をもらえる優秀作品。
権力をもった人物がメインに据えられているのに、これだけ親近感を抱かせる表現力は珍しいですね。
全体的に人に寄り添った丁寧な構成になっており、物語のほころびを感じさせず、繊細な心情を表現しきってくれました。煙草は「アルバート王子」の心境を表すのに優秀な装置として活躍していましたし、「エリザベス妃」とローグの妻が対面するシーンは、本来あるべき身分の違いを思い出させる良シーンだと思います。終盤もスッキリではなく先の展望を想像させる映像となっており、ストーリーの余韻を静かに残すまとめ方はお見事。
難しい題材でありながら広い層にオススメできる優しい作品です。
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