小説『罪の声』
今回は小説『罪の声』を紹介。
あらすじ、個人的な見どころ、評価をまとめました。
(核心部分を触らない程度のネタバレを含みます)
評価★★★
キャラクター ★★★
ストーリー ★★★★
ミステリ ★★★★
作品キーワード
- ミステリ
- サスペンス
- 記者
- 実話題材
- 映画化作品
『罪の声』の基本データ
タイトル:『罪の声』
著者:塩田武士
出版社:講談社
発表:2016年
映画化作品『罪の声』
関連オススメタイトル
血縁者が過去を追っていく感覚が少し似ている点から。
参考記事
あらすじ「発端は父の遺品のカセットテープ」
ある日、紳士服のテーラーを営む「曽根俊也」は父の遺品の中からカセットテープを見つける。テープには幼い自分の声が吹き込まれており、一緒にまとめられていたノートには「ギンガ」の文字が記されていた。はじめて見たテープなのに内容に聞き覚えがあるという違和感。少しずつ湧き上がってくる恐怖。早鐘を打つ心臓を抑えつつノートパソコンで動画サイトを開き、31年前のとある脅迫事件に使われた音声を再生する俊也。
ノートパソコンから聞こえてくる音声は、手元のカセットテープから聞こえてくる音声と同じものだった。
ココが見どころ
見どころ
現実にあった企業脅迫事件をモチーフにした作品。父が大事件に関係していると思われる「曽根俊也」と、曽根俊也事件を追いかける記者「阿久津英士」二人の視点を中心に物語が展開します。物語の始まりは「脅迫テープに吹き込まれた子どもの声」から展開され、その後もさまざまな形で子どもが事件に関わっていきます。それを二人の主人公視点で追っていくのですが、想像を掻き立てられる描写に、読み進めていくと痛々しさが徐々に伝わってきます。
文章は少し硬めで、とくに記者である阿久津視点だと取材記録のような情報が多く記載されています。とくに読みづらいわけではありませんが、ちゃんと状況を整理して読み進められないと事件の真相に迫っていく臨場感は半減してしまうかも。
逆にしっかりと頭に入れて読み進めることができれば、終盤には確かな達成感と感動が待っています。少し硬め&少し長めの小説に抵抗がない方にオススメです。
総評★★★
間違いなく人によって評価が分かれる作品ですね。文庫本でもそれなりの厚みがあり、取材記録のように淡々とした詳細を並べられるので、人によっては退屈に感じるかもしれません。ちゃんと読んでいかないと内容を整理するのも一苦労。個人的にはあまり好みではない内容でした。
「正義」や「真実」という言葉を使い、プライバシーを簡単に越えた情報を引き出そうとする光景はまさしく新聞記者らしい姿ですね。見方によって脅迫のような取材方法を取ることもあります。表面上は心苦しい様子で「社会正義」を記事にし、喉元を過ぎれば罪悪感を忘れ、また同じことを繰り返す。自分に都合の悪い会話は巧みに受け流し、都合のいい情報を引き出せばそれで良い。裏社会に生きてきた者たちが数多く登場するので、それと比較すると多少明るく見えるかもしれません。演出のためか持ち上げるようなシーンが鼻につき、盛り上がるはずの後半では少々気持ちが冷めてしまったのが我ながら惜しい。控えめにとどまった評価はあくまで私自身の感想。マスコミの描写が気にならない方ならば感動できるはずなので、評価はもっと上がるでしょう。
ミステリ作品などで長文に慣れている方でも、一気読みしないと状況整理は難しいでしょう。記憶力に自信のない方は休み休み読んでいると内容がこぼれ落ちます。筆力は間違いなくありますし、モチーフの話題性も強い作品なので、読書仲間がいれば感想戦がおもしろくなりそうですね。
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