小説『植物図鑑』評価感想|植物知識と恋愛要素をまとめあげた良作

オススメ紹介

今回は有川浩先生の小説『植物図鑑』を紹介。
あらすじ、感想、どんな方にオススメなのかをまとめていきます。

(核心部分を触らない程度のネタバレは含みます)

オススメ度★★★★
 キャラクター ★★★★
 ストーリー  ★★★★
 設定     ★★★★

こんなキーワードが気になる方にオススメ
・恋愛
・植物
・花
・料理

『植物図鑑』の基本データ

タイトル:『植物図鑑』
作者:有川浩
出版社:角川書店
文庫:幻冬舎文庫
発行年:2009年

あらすじ「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」

「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」

仕事の飲み会の帰り、「さやか」は路上に転がっていた行き倒れの青年「樹」を拾う。

翌朝その自分の行いに頭を抱えるも、起き抜けに並べられた朝食に胃袋をつかまれ……。

感想・評価

キャラクター★★★★

現代日本に住む、人間らしい「曖昧さ」をもったキャラクターたち。

「さつき」と「樹」を含め、「良い人」と「悪い人」の線引きを最初にサッと引いて、その後の行いで線を薄く塗りつぶしていく描写が上手い。

単純に「良い人」が綺麗なままで終わるのではなく、間違いや葛藤を混ぜることで人間味が増し、より親近感の湧くキャラクターになった。

逆に「悪い人」にも汚名返上の機会が与えられ、全体的に優しい世界観が仕上がっている。

この辺りは現実味があって良いですね。悪人をバッサリ斬る作品とはまた違った読み味です。

ストーリー★★★★

植物のエピソードを主軸に段々と物語を築いていき、終盤にキャラクターの関係にメスを入れて綺麗にまとめていく。

終盤の心情描写は甘く切なく細かく表現され、この辺りは有川先生らしい。

植物のエピソードについては、植物に詳しくない人に対しても非常に優しく知識を教えてくれる。

「雑草という草はない」ですね。

美味しそうな料理シーンが多数あるので、献立を決める前に読んだ方がいいかもしれません。

設定

キャラ設定で現実味があるとは述べましたが、出会いはフィクションならではの「衝撃の出会い」。ガールミーツボーイというべきか。

現実なら不用心と思える行動から始まりますが、それ以外は基本的に常識人の行動なので、世界観は馴染みやすい。

植物に関する知識は現実に則しており、野草取集についての注意は作中でちゃんと喚起されているのでご安心ください。取集の際は再度確認の上、行った方が良いと思いますが。

総評★★★★「植物知識で誘い、恋愛要素でトドメをさされる物語」

植物知識が満載で、単純に知識詰めの読み物として面白い。

章ごとにメインとなる植物がある程度決まっており、区切りの良い読み方で知識を詰め込んでいくのがとても楽しい。

たたやはり物語としての締めは「恋愛要素」のため、その辺りを受け入れられるかが評価の鍵となる。

なのでオススメしやすいのは「恋愛小説」好きの方がメインになります。

比較的女性向けとは思いますが、男性でも「恋愛要素」に抵抗がなければ読みやすいでしょう。

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