価値観の異なる二人が築いていく、不思議な友情

しっとりと始まるカーシーン。二人の関係性が垣間見えるシリアスな幕開けと思ったら、「実話に基づいた物語」という文字にドキリとさせられる。
主軸となる人物は二人。一人は前科持ちの乱暴者「ドリス」。
下ネタ満載の品のない言動に、無遠慮な行動に周囲から煙たがれることもしばしば。苦しんでいる病人にタバコを薦めるなど、常識的な人間にはおよそ理解しがたい行動を見せることもある。

そんなドリスが面接を受けた仕事は資産家「フィリップ」の介護職。失業保険を受給することが目的だったため、面接の際にも粗暴な性格を隠すことはない。しかしフィリップが求めていた人物は対等な関係の構築。ドリスの歯に布を着せない態度を決め手にフィリップは採用を決める。仕事が決まったドリスだったがその態度を改めることはなく、ストーリーの前半は彼が周囲を振り回す展開がメインとなる。

もう一人の主人公「フィリップ」はドリスとはまったく価値観の異なる人物。過去の事故で妻と体の自由を失くすなど重い背景を持つ。音楽や絵画など芸術面に精通し、ドリスが「鼻血を散らした」と揶揄した絵画を41500ユーロ（日本円で約570万円）で購入したりする。
そんなフィリップだからこそドリスの行動を理解できず、最初はまったくかみ合わない。秘書や使用人も含めてドリスの一挙手一投足に振り回される。
だが二人の絆が構築されていくにつれて、逆にフィリップが振り回すターンが増えていく。

こういった作風では後半のカタルシスのために前半が犠牲となることも多いが、前半はドリス、後半はフィリップが解放的な展開を見せる為テンポは良かった。