小説『九つの、物語』あらすじ感想評価|優しく静かに紡がれる兄妹の物語

九つの、物語 オススメ紹介

今回は小説『九つの、物語』を紹介。
あらすじ、個人的な見どころ、評価をまとめました。
(核心部分を触らない程度のネタバレを含みます)

『九つの、物語』の基本データ

タイトル:『九つの、物語』
作者:橋本紡
出版社:集英社
発行:2011年

あらすじ「お兄ちゃんの幽霊と過ごす、平穏な日常」

大学生になった「ゆきな」の前に突然現れた死んだはずの兄。
奔放に振る舞う兄との日常に最初は驚いたものの、いつの間にか馴染んでいくゆきな。
しかしそんな日常の先には、痛みと喪失の時が待っていた。

視聴者・読者層キーワード

  • 兄妹
  • 読書好き
  • 静かな雰囲気
  • 優しい世界
  • 幽霊

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小説「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズ

読んだら他の本も読みたくなってしまう、本の知識が存分に詰まった作品。

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『ビブリア』同様に、多くの本の情報が詰まった作品。
キャラクターも印象的で心に残ります。

ココが見どころ

素敵な幽霊お兄ちゃん。

完璧ではなく、いい加減で真面目で。
かなり読書家で、料理上手で、女好き。
最終的に「素敵」という言葉が一番しっくりくる。
そんなお兄ちゃんが登場します。

そして、そんなお兄ちゃんをもつ妹「ゆきな」も可愛らしい。
自由奔放な兄に振り回されているかと思いきや、思い返すとむしろ兄を振り回すシーンの方が多いかもしれません。
こちらも結構本を読み、性格的には大人しめで兄と違うなと思いつつも、やっぱり似てるなと感じる。

2人が静かに紡ぐ平穏な日常に心安らぎ、どこか一抹の不安を抱えながら進んでいく物語を楽しめます。

本好きの兄妹って、なんか微笑ましいですよね。

総評★★★★★「優しく大事に重ねられていく心地よい兄妹の物語」

ストーリーが進むとともに一枚、また一枚と重なっていく優しいエピソードが心地よい。
キャラクターのセリフも含め、全体的に静かで丁寧な語りがゆっくりと胸に染み込んでいく。

料理シーン1つ取っても会話ややりとりが丁寧で、書いていないはずの風景が自然と頭に浮かんでくる。
「2人が料理している間、ゆきなはこんな事を考えているんだろうな」
「料理している2人は、多分こんな会話をしているだろう」
こういった行間の描き方があまりにも自然に馴染み、読者を簡単に世界に引き込んでしまう。

恋人を紹介する際、妹に「自慢したいから可愛い服に着替えろ」と言うお兄ちゃんが微笑ましかった。

派手なシーンで印象を根深く残す作品ではなく、気づけば心の隅で静かに居場所を作っているような、そんな作品です。

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